B&B ”岸本佐知子×クラフト・エヴィング商會『なんらかの事情』(筑摩書房)刊行記念トークイベント「なんらかのタイプ、ねにもつ事情」”に参加しました。
装幀家として大好きなクラフト・エヴィング商會の吉田篤弘さん・吉田浩美さんと、翻訳家としてよりエッセイストとして大好きな岸本佐知子さんによる新刊「なんらかの事情」の発売イベントが、これまた大好きで頻繁に通っている下北沢の書店"B&B"で行われ、ワクワクしながら参加してきました。
前回の翻訳家"柴田元幸"さんのイベントの時も満員御礼でしたが、今回のイベントも引き
続き満員。予約しておいてよかったー。
B&Bは都内で一番おもしろい書店だと思います、ほぼ毎日何かしらのイベントをされているので、気になるイベントがあればぜひ足を運んでみてください。
さて、開園30分ほど前から会場にいたのですがすでにお三方は会場におり、開演15分前になるとマイクありの雑談が始まって、それがすでにおもしろいという。早めに来ておいて良かった。まぁ、本当にどうでもいいような話ではあったのですが(笑)、歪んだ妄想エッセイを書く作家と、「ないもの、あります」といった奇抜な作品を産み出す変な目線を持った装幀家との対談
だけに、端々にユーモアが溢れていて、実に至福のひととき。
※実は同様のイベントが新宿ですでに行われていたそうで、チェックしていなかったのが悔やまれました。
- 作者: クラフト・エヴィング商會
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2001/12
- メディア: 単行本
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佐知子さんの書籍デザインをしたのがクラフト・エヴィング商會であることから今回のイベントとなったのはわかっていましたが、もともと篤弘さんが佐知子さんのファンだったことからつながりは始まったそうです。それこそ実は、500mくらい離れたところに住んでいて、同じ小学校だったくらいで。
ここまでで、面白いなと思ったコトバが、
・おもしろい経験を書くと、一行しか書けない、書いてしまうとおもしろくなくなることがある。話して盛り上がるタイプのものと、書けるものは違う。
ということ。
おもしろく書けるということは、やっぱり「技術」が必要なのですね!
そして、篤弘さんがエッセイにあたっての「問題」を3つ挙げる。それが、
・自慢問題
自慢問題とは、そもそもにおいてエッセイというものは、一種の自慢であること。たとえ自虐的なことや、ダメダメなことでもダメ自慢となる自覚が必要。
・無知問題
「知らない」ことで、妄想していくことがおもしろさに繋がる。調べて答えを見つけてしまうことが、おもしろさをなくしてしまう。
・素敵問題
往々にして、エッセイは素敵であると思われがちだが、それはエッセイのバカにされているよう。行っちゃいけない方向が「素敵」と言われるところ。
の3つ。特に、岸本佐知子のエッセイの根幹を成すものは、2つ目の無知問題だろうなと思います。妄想=佐知子エッセイと括って、大体合ってるでしょう。
それにしても佐知子さんの、「自分の中に検閲官がいて、自分を強く縛る。自分の自慢をダメだししてくる。」という表現がおもしろかった。少しでも自慢しようという文章を書こうとしたり、つまらない文章にOKを出そうとすると、ダメだししてくるわけです。ボツ作品を表に出すことになったときは、検閲官が丸くなったと。この表現力が、名エッセイを名エッセイたらしめているんでしょうね。
ちょうど1時間ほど経ったところで、岸本佐知子さんによるボツエッセイの朗読が始まりました。それにしても、ボツのエッセイを読ませるあたりがヒドイですね(笑)
エッセイタイトルは「王国」
誰にも邪魔されない、みじめな小屋のようなところで仕事がしたいということで思い出したのが、作曲家のマーラーが馬小屋のようなみじめな小屋で作曲を行なっていたということで妄想が膨らんでいき、そこで自分だけの王国を創りあげていくというものなのですが、そのためには小屋にいるマーラーをどこかに移動させなければならない、という観点に移るのが岸本さん。 会場でも爆笑で、これがなぜボツったのか!どこかで日の目を浴びてほしいものです。
※ちなみに「マーラー 小屋」でGoogle検索すると小屋の画像が出てきます↓
2時間があっという間の楽しいイベントでした。
最後におもしろいと思った佐知子さんのコトバを拝借。
「私がアイデアを溜めていくのは、コトバ単位ではない。イメージや状況が、溜まる。」
岸本佐知子さん、クラフト・エヴィング商會のお二人、B&Bさん、楽しいイベントをありがとうございました!サイン、ありがとうございます。
※そういえば、クラフト・エヴィング商會は来年の今頃、世田谷文学館で展覧会が行なうそうです。非常に楽しみ。
- 作者: 岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/11/08
- メディア: 単行本
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