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小田雅久仁 「本にだって雄と雌があります」 を読みました。

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この本のことは、今年1月13日に新宿ロフトプラスワンで行なわれた「闘うベストテン 場外乱闘編」で知りました(ちなみに当ブログでもレポを挙げています。)

もともと小田さんのデビュー作「増大派に告ぐ」は読んでいたのですが、あまりに違う作風に驚くばかり!デビュー作の暗黒面はどこに行ったのか?

増大派に告ぐ

増大派に告ぐ

 

この本を一言で説明することはできませんが、森見登美彦の作風が好みの方や、本に埋もれて死んでも構わない程の本好きであれば、間違いなくおもしろく読めます。何せ、雄と雌の本を並べて置くとその間に子供が産まれるんです(当然本のかたちで)。しかも両親のタイトルや中身が引き継がれるのですから、本好きにとっては夢のような話ではないでしょうか!そうやって産まれた本は、「幻書」と呼ばれます。

 

最初のほうで一例として挙げられる幻書のネーミングセンスが爆笑モノで、ジャン・ポール・サルトルの「嘔吐・壁」とミヒャエル・エンデの「はてしない物語」の並べたところ産まれた幻書のタイトルが「はてしなく壁に嘔吐する物語」。うん、なんというか、絶対に読みたくない。

 

「増大派に告ぐ」を読んだときには気付かなかったのですが、ここまで笑える文章を書ける方だとは考えもしませんでした。上記の幻書のくだりを抜き出してみても、

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”それにしてもなんについて書かれた本だろう。私は初めて目にした生まれて間もないその幻書の題名をこわごわ覗きこんだ。「はてしなく壁に嘔吐する物語」。朝も早うから、えずきそうになった。子供だてらに嘔吐などというしち難しい熟語を知っていたのが災いして、阿呆には効かない文字感染型の吐き気を催したのである。これはきっと忘年会に引っぱり出された新入社員がべろんべろんになって側溝に頭を突っこんだまま路地裏に放置される話だろうなどとはさすがに想像を巡らせなかったが、とにかく強いて読むにも二、三行ごとの空えずきは免れぬであろう胸糞悪い題名だった。”

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と、爆笑は必至。特に忘年会のくだりは素晴らしい。

この部分だけが笑えるわけではなく、大体見開き2ページに1度は平気で笑かしてくるので、電車や公共の場で読むのはやめたほうがいいかもしれません。私は電車でニヤニヤして向かいに座った人に気味悪がられました。。。

ちなみに本の見た目は普通のハードカバーなのですが、この独特の言い回しが多数を占める文章がなかなか読み進められず、読み進めるのにとても体力を使います(芥川賞受賞の”abさんご”とはまた違った意味で)。

 

ネタバレになるのであまり詳しくは書けないのですが、意外と「本」そのもののエピソードは少なく、どちらかというと”深井與次郎”という人物を中心とした一族の物語という面が強いように感じます(テイストは違うものの桜庭一樹さんの「赤朽葉家の伝説」という小説のことを思い出しました)。読み進めていくうちに自分が深井家の縁者のような気分になっていき、最後のほうで描かれるある重要なシーンで私は思わず涙しました。まさか、こんな本(失礼)で泣かされるとは。。。私は”リアリティのある現実の舞台に、ひと匙のファンタジー”、という塩梅のファンタジー小説が大好きなのですが、「本にだって雄と雌があります」はその塩梅が完璧でした。

 

この本は、本好きの方には絶対読んでもらいたい。

読んだ後に、自分の本棚がきっと気になりだします。「この本とこの本を並べておいたらきっとこんなタイトルの本が産まれるぞ、フフフ。」と気味悪い妄想にとり憑かれること間違い無しです。

本にだって雄と雌があります

本にだって雄と雌があります

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