スタジオジブリ『風立ちぬ』のコピー、「生きねば。」が指し示すものとは何か。
スタジオジブリの最新作『風立ちぬ』を観にいきました。
としまえんで行なわれている体感型脱出ゲーム 「サイレントヒル:リベレーション
REAL」の参加した後に急遽思い立ち、すぐそばのユナイテッド・シネマとしまえんに
観に行ったのですが、公開日が夏休みの初日あたりだったこともあり、子供連れの家
族でいっぱいでした。
ポケモンやアンパンマン、忍たま乱太郎にモンスターズ・ユニバーシティと、今年の
夏映画もファミリー向けの映画でひしめき合っています。本来ならばジブリ作品もそ
の範疇で闘っていることが多いのですが、本作『風立ちぬ』は明らかに毛色が違いま
すね。
そもそも、ひょっとして宮崎監督がオトナの恋愛模様をここまで積極的に描いたのは
、『風立ちぬ』が初めてなんじゃないでしょうか?幾度となく描かれるキスシーン(
効果音付き!)や、それこそベッドインするシーンもありましたし。アニメーション
は子どもたちのモノ、と一貫して子どものために映画を作ってきた宮崎監督が、どの
ような心境でこの方向に舵を取ったのか、興味深いです。
※それについては、敬愛する『映画のブログ』さん
(http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-428.html)で、大変鋭く深い
考察がなされています。ぜひ、ご一読を。
ジブリのキャッチコピーと言えば、
「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」 - 映画『魔女の宅急便』
「好きなひとが、できました。」 - 映画『耳をすませば』
「生きろ。」 - 映画『もののけ姫』
などの、糸井重里氏が付けたものが有名ですが、本作『風立ちぬ』のコピー、「生き
ねば。」は、宮崎駿自身が書いた漫画版「風の谷のナウシカ」最終巻の最終コマのコ
トバ。映画化されたのは2巻の途中まででしたが、漫画版はその後の世界も描かれて
います。どんな苦境にあっても、ナウシカは自然と共に生きていく、という強い覚悟
の上のコトバだったのでしょう。『風立ちぬ』でそのコトバをコピーとして使用した
ということはやはり、『どの時代であっても「生きる」ことを諦めない。』というこ
とが問われているように感じます。思えば、ジブリ作品には『生』をテーマにした作
品が多いですね。上でも引用したもののけ姫のコピーは「生きろ。」ですし、ポニョ
でも「生まれてきてよかった。」とのメッセージを発信していました。『生』という
テーマは普遍ですし、モノはいくらでもあるのに何だか息苦しい現代にもマッチして
いるように思います。
(参考:http://www.cinematoday.jp/page/N0052465)
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正直、中盤の恋愛シーンはかったるいなと思いながら観ていましたが、主人公・堀越
二郎のぶれない強さが描かれる結末に、もうちょっとで涙が出るところでした。飛行
機に憧れる少年時代の夢から、生い茂った草むらで残骸と化した戦闘機「零戦」を見
つめる夢で終わる。
”自分は殺戮兵器をつくっただけのか?”
そんなことを二郎は思っていたのかもしれません。
でも、殺戮兵器であろうと飛行機が好きな自分は本当。
きりがないとわかっていても、見知らぬ子どもカステラを差し出した自分も本当。
妻と1日1日を大事に生きていくと誓いながら、結核療養所から抜け出してきて床に臥せる妻の横で、設計図を描きながら煙草を吸う二郎の気持ちにも嘘はない。
矛盾しているが、そもそも完璧ではないのが人間というもの。
私が好きなリアルタイムシンガーソングライター・高橋優の「素晴らしき日常」という歌に、こんな歌詞があります。
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きっと僕らに悪意があるわけじゃないと思う
どうしたらいいのか分かんないだけ 模索しながら傷付いて傷付ける
麗しき国に生まれ育ってしまったために
どれもこれもあって当たり前の日々を生きて
完璧なものだけを欲しがっていった始末に 完璧じゃない人間を遠ざける人々
僕らが生きてることに理由(わけ)なんて あってもなくてもいい
なんにしたって泣いて笑っている あの少年も政治家も 同じこの星を
まだ歩くことはできるかい? 転んでも起き上がれるかい?
そこから覗いてる景色は天国でも地獄でもない先進途上国
失望することばかりでも 目を見張る価値があるもの
その通じ合っているような気がする目の前の人を
愛して ただ愛して 支え合ってゆけるなら きっとまだ間に合うよ
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生き方に正解はない。だが、生き抜くことが自分なりの答えとなる。
そんなことを感じさせる、良作だと思います。
・・・・・・・・・・・・ただ、私にはやはり堀越次郎の『声』に納得がいきませんでした。エヴァンゲリオンで有名な庵野監督が声優をつとめていることで波紋を呼んでいることは有名ですが、「演じていない声」を、”ただの棒読み”にしか聞き分けられず、できるだけ二郎は喋らないでくれ!と思いながら映画を観ていました。良かったという方も多いので、単に好みなのかもしれませんが、残念です。。
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