松江市教育委員会が小中学校に、漫画「はだしのゲン」を閉架要請した件について
『はだしのゲン』を図書館で自由に閲覧できる状態にすべきか、松江市教育委員会が小中学校に"閉架"を要請
http://www.huffingtonpost.jp/2013/08/16/barefoot_gen_n_3766161.html
規制規制規制規制・・・また新しい規制かと、ため息が出ました。
今年は戦後68年。つい先日その黙祷式が終わり、今年も戦争とは何だったのかについて考える時期になりました。だいたいこの時期には戦争映画も公開されますね。昨日は話題の”終戦のエンペラー”を観てきました。風立ちぬも観ましたし(終戦のエンペラーは少し思うところがあったので、次回のエントリーにしようと思っています)。
で、その終戦記念日の次の日に8月16日に、松江市教育委員会がこういった発表をしました。⬇
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松江市教育委員会が、原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」を子供が自由に閲覧できない「閉架」の措置を取るよう市内の全市立小中学校に求めていたことが16日、分かった。
市教委によると、首をはねたり、女性を乱暴したりする場面があることから、昨年12月に学校側に口頭で要請。これを受け、各学校は閲覧に教員の許可が必要として、貸し出しは禁止する措置を取った。
市教委の古川康徳副教育長は「作品自体は高い価値があると思う。ただ発達段階の子供にとって、一部の表現が適切かどうかは疑問が残る部分がある」と話している。
47ニュースより
http://www.47news.jp/CN/201308/CN2013081601001339.html
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みなさんははだしのゲンを読んだことがありますか?私はそれこそ小学校の図書館で読みました。授業でも課題図書として扱われていましたよ。
私が一番憤りを覚えたのは、松江市会議議事録(上記ハフィントンポストの記事を参照)に記載されていた、はだしのゲンを『不良図書』として判断したという部分。理解しかねます。
確かに、表現は目を覆いたくなるようなことが多いです。でもそれは戦時中なんだから当たり前でしょう。実際にはもっと酷かったんじゃないでしょうか。むしろマイルドに描いているレベルだと思います。
私が小学生のときに初めて読み、かなりショックを受けたことを覚えています。同級生には、もう2度と読みたくないと目を逸らす者もいました。少なからず戦争について何か思わせる経験となったのでしょう。きっと、こんな酷いことを2度と起こしてはならないし、味わいたくもないと思うものでしょう。それだけでも充分な成果と言えるんじゃないでしょうか。
臭いものには蓋をして見せないようにする。きれいなものばかりを並べての純粋培養。そんな教育になんの意味があるのでしょう?
ただでさえ戦争を知らない人間が増えていくのです。30歳の私くらいの世代だと、祖父母から戦争体験について聞く機会もありました。でも、時が立つにつれ話はより間接的になり、信憑性も薄くなり、興味をなくす以前に持たなくなるのは目に見えています。
今回の流れで、”図書館で取り扱わない”という発想までには至らなかったことは救いではありますが、閉架してある本をわざわざ見ようとする子どもたちがどれだけいるというのか?開架式で、ちょっと怖いもの見たさで読み始める、そんなきっかけを完全に失ってしまいます。
ツイッターなどでも、この件については多数の意見が寄せられていますが、こういった本は図書館で扱うからこそ意味がある、とする意見が多いように思います。確かに全巻揃えて家に持っている方は少ないかもしれません。学校ですらこういった扱いになってきている本を、家庭で教育の一環としてはだしのゲンを取り入れるところは、きっと少ないでしょう。
だからこそ、学校で読めるようにしておく必要があるんだと思います。この規制が進めば、一般的な公立図書館などでも同じようなことになりかねません。
私はこの規制に、断固として反対します。
ex,ちなみに、はだしのゲンの作者・中沢啓治さんは、2012年12月19日にお亡くなりになりました。それから1年経たずしてこの仕打ち。酷すぎると思います。
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