【新経連×SHAKE100】なぜ教育が今熱いのか~教育×ITの未来~ 『サスティナビリティ』と『マネタイズ』で教育は変わる。
【新経連×SHAKE100】なぜ教育が今熱いのか~教育×ITの未来~
http://jane-shake100.peatix.com/
本イベントは、“明日から仕事に使える知恵”とビジネスパーソン同士のネットワーキングの機会を提供するビジネスパーソン向けイベントコミュニティ「SHAKE100」と、一般社団法人 新経済連盟が主催する「新経済サミット2014」が共同で開催し、「教育とIT」をキーワードにパネルディスカッションを実施いたします。
90年代から進化・普及を遂げてきたデジタル技術(Technology)は教育分野(Education)にも浸透し、2013年は「EdTech」という言葉が国内外で一般的に認知されるようになりました。
特にスマートフォンなどのデバイスや、ウェブテクノロジーによるイノベーションが著しく、動画やSNS、ゲームなど様々な教育の形が生まれています。既存の教育のあり方が大きく見直される必要性が日増しに高まっている昨今。今後教育業界はどのように変貌を遂げていくのでしょうか。
◎主なトーク内容
・10年後の教育がどう変化しているのか
・ITが与える教育へのインパクト
・教育業界の市場とマネタイズ方法
今話題の教育系スタートアップ企業、そして教育分野に投資をした投資家の方々にご登壇頂き、なぜ教育に注目が集まっているのか、これからの教育がどのように変化するのかを語って頂きます。
教育×ITの未来は明るい?暗い?
最近は社会問題系のイベントばかり企画したり参加したりしていましたが、久しぶりに個人的重要テーマ「教育」に関するテーマのイベントが開催されましたので参加してきました。それにしてもこの『SHAKE100(シェイクハンドレッド)』が主催するイベントはほとんどが無料であるにも関わらず、ゲストが超豪華だったりするのでかなりオススメです。ちなみに前回参加した際は”為末大さん×木暮太一さん”、その前は”家入一真さん×木暮太一さん”でした(木暮さんがかぶっているのはたまたまです)。
※前者の記事はこちら
為末大が語る、”諦める力”の本質とは? 「頑張ってもムダ」は本当か!?~僕らが生きるこんな時代の戦い方~ 木暮太一×為末大 特別対談!レポート
と、そんな話をしていながら何ですが、今回のイベント”【新経連×SHAKE100】なぜ教育が今熱いのか~教育×ITの未来~”の登壇者を、私は誰一人知らないままに参加しました。なので、自分の備忘録も兼ねて簡略にプロフィールを記載しておきます。
池谷大吾(株式会社スマートエデュケーション)
・未就学児向けアプリケーション制作
・スマホ利用ママの2人に1人がユーザー。
・従量課金型から月額課金型に転向し、成功。
・今月にはユニークユーザーが100万人になる予定。
・NHKとコラボレーションし、知名度が一気に上がる。
・既存の教育方針をなぞるようにアプリ化することには消極的。アプリ、ITならではのアプリを開発している。
石井学(DRECOM)
・外資系コンサルティングファームを経て、2006年10月にドリコムに入社。
2013年4月よりソーシャルラーニング事業部長として事業開発を担当。
・学びを続けることを使命とする。
・ソーシャルラーニング、ゲーミフィケーション(協力、競争)、フリーミアム等をテーマとしている。
・えいぽんたん(ゲーム要素の強い、アルク提供の英単語勉強アプリ)の開発。
・継続できる勉強環境をつくる。
・デイリーで3万2千人ほどのユーザー、内40%はリピーター。
・99%は無料版のみの利用者
・マネタイズがどうするかは、これからの課題。
宮地俊充(株式会社ベストティーチャー 代表取締役社長)
・英語×ITがテーマ
・英語は実技科目であると考える。英語を書く、話すという経験が重要。
・オンラインでしかできない学びを提供する。
・英語は「自分が何を話したいか」からスタートしよう。
河野純一郎(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社 パートナー)
・ベンチャーキャピタルとして、ITベンチャー企業への投資及び投資先企業の戦略立案からその実行までの経営支援業務に従事。
・伊藤忠グループとの連携が最大の強み。
1・いま何が教育×ITで「アツい!」のか
4つのテーマパネルに沿ってディスカッションが行なわれましたが、今回は書き起こしよりも、ピンポイントで重要なことを抜き出す形で紹介していこうと思います。
(もともと全然違う業界からなぜ教育に入ったのか、という起点質問に対して)
石井さん:元々はソーシャルゲームの開発を行なっていた。教育の面でフリーミアムのアプリは光明があると考え、教育アプリの開発に乗り出した。
池谷さん:2011年に起業したが、自己中心的な理由で、サーバーエージェントで起業したかったから。きっかけはシンプルで、自分の子どもがiPhoneで遊んでいたこと。フィーチャーフォンのときにはこんなことはなかった。子どもにはディスプレイとキーボードのふたつは認識できないから。しかし、教育業界は隙だらけ。アナログな部分が多すぎて、ITを使っていくらでも開拓できると踏んだ。
宮地さん:(最初から英語というドメインをとったのはなぜか?に対して)自分が英語を喋りたかったというのが一番。単純にこれをやったら英語を喋れるようになったらいいな、というサービスを開発したいという思いで起業した。
石井さん:発音させるアプリが増えてきた。何よりも、「いかに継続させるか」が重要。ヒットしても続かず廃れていくアプリがなんと多いことか。
(オンライン授業サービス・スクーに投資した理由は?に対して)
河野さん:投資を考える際に、「解決すべき問題の大きさ」を考える。投資を通じて問題を解決したいということもあり、投資のテーマとしてはマッチしている。オンラインに関して、日本は学習環境に恵まれている。教育には「先生」の人間性が重要!「面白くて楽しい」好きな先生であれば授業は楽しくなるのは当たり前。いい体験は記憶の定着に繋がる。そして、スクーにはコミュニケーション能力がある。
2・注目している人物、企業、サービスは(国内外)
石井さん:Q&Aサービス。困ったときにすぐに応えてくれる、すぐにをアンサーしてくれる機能が素晴らしい(LINE Q http://lineq.line.me/)。Yahoo!知恵袋等では遅すぎる。モチベーションを保つために即時性は重要かもしれない。
池谷さん:基本的には海外を見ている。ディズニー、レゴは非常に強い。それは他にマネタイズできるところを持っているから。なのでアプリは無料で問題ない。
宮地さん:正直ない。塾や家庭教師に勝てるサービスはないと思っている。海外ではニュートンというサービスがいいのでは。これはITでしかできない学習互助サービス(アプリではない)。
※ニュートンがどういうサービスなのか聞きそびれました。誰か教えてください!
河野さん:オンタイム学習プラットホームのマナボは、チームとして非常に優れている。授業は学校で、復習は家庭というテンプレではなく、授業は家庭で、学校でみんなで学び直すというスタイルも世界では出てきている。こういった流れが日本でもはやるのではないか。先生は「壇上の賢人」であったが、今後はファシリテーター的なものとなっていくか。
3・教育系サービスを開発する際のポイントは?
宮地さん:自分が欲しいサービスをつくる、というのが重要。受験系サービスは自分が欲し”かった”サービスをつくる。好きでやっているものはやはり強い。
池谷さん:教育をやっている人は、原体験のある人が多いが、それだけでうまくいくわけではない。結局お金じゃね?と思うこともある。きれいごとや、単なる電子化じゃなくて、どうやってマネタイズをするかはしっかり考えていく必要がある。最初にそのアプリやサービスに触れるときがユーザーは一番熱い思いを持っている。そこでいかに有料化を薦めるのか、真剣に考えた方がいい。
石井さん:ほんとうに「続く」のかを常に問う。10代の頃に勉強に挫折したような人が続けられるものをつくりたい。
4・教育サービスはどうマネタイズしていくのか
石井さん:価値に対する対価をどうつくるか。知る・学ぶことについては価値が下がっている。それらは全てフリーで得られるものになってきているので。続けることなど、「その後の体験」にお金を払ってもらうシステムの構築が必要。手法論で言うと、フリーミアムを押し進めていきたい。インプットでなく、アウトプット時にお金を取る仕組みを考える。
池谷さん:がめつくマネタイズしている。教育は、そう簡単にもうからないと思っていた方がいい。ソーシャルゲームと比べられるが、全くの別物。そもそも義務教育は無料なんだから、そうそう簡単にマネタイズできない、心構えとしてはそう思っておくこと。
その中でも、従量課金型よりも月額課金型は向いているビジネス。つくる側も月額に耐え得るものをつくらなければならないが。
宮地さん:オンラインになったとたんお金が取れなくなる。お金を払うことが自慢になったり満足感だったりすることが重要で、あまりお金の額は関係ないのかもしれない。スクーやっていることが自慢だったりすることでブランディングしていくとか。
河野さん:アメリカだと、人材紹介としてお金をとる手法もある。就職や転職に有効な証明書を発行する、といったサービスも存在している。教育は結果ができるのに時間がかかるし、心構えとして「難しい」ことは意識しておく。お金を取る主体を変えるのも手。企業から福利厚生の一環としてお金をとるという考え方もある。
5・今後教育産業を変えていく大きな波、トレンドは
石井さん:常に学びの好奇心をそそる。先生の立ち位置は「教える」から「メンター」のような存在に。
池谷さん:教育のイノベーションは着実に起こっていくと考えられる。日本は資金に恵まれているし、間違いなく関わっていこうとするプレイヤーは増えていく。
宮地さん:ファイナンス環境が整っているので、起業する人が増えればきっといい教育サービスは産まれてくる。即レスポンスであればあるほど続くだろう。
河野さん:既存の教育産業との共生、共闘が重要。少子化によって学習をする子どもの数は決定的に減っていく。ベンチャーだけで世の中を変えるのは現実として難しい。大手企業や教育産業との連携は必須である。そして、楽しさを産み出し・継続する仕組みが重要。教育事業は、原体験としての強いものがないと心が折れやすい。盛り上がっているから参入しようという思いではお金は貸してもらえないのが現実です。
まとめ
そもそも、教育の現場をIT技術を使ってどう改善していくかを考える場だと思い込んだまま参加したのは私のミス。実際は、ベンチャー企業がIT技術を使用して教育のカタチを変えていく手法について語る場でした。思っていたこととは違ったとはいえ、非常におもしろい話が聞けました。
確かに、もはや教育は学校のみが行なえるものではなくなってきています。単に勉強するという目的であれば学習塾や家庭教師の方が優れているでしょうし、今であればアプリケーションやWebサービスを使って、親が教えることも簡単にできるようになりました。対談内容にもあったように、学校教育の現場は隙だらけ。IT技術が日に日に進歩しているにも関わらず、驚くほどにアナログな仕様のままになっている。教育ベンチャーは、そういう意味では参入しやすい状況のように端からは見えます。
しかし、そもそも義務教育は無料であることから、マネタイズすることがきわめて難しい。情報を知り得たり、学んだりすることは、無料の範囲内でできることがあまりにも多い(もちろん情報リテラシーが備わっていてこそ、正しく学べるのですが)。よって、知ること・学ぶことだけのためにお客さん=親は課金しない。
・いかにおもしろいアプリをつくれるか。
もちろんそれは大事ですが、それだけではサスティナビリティ=持続可能性がない。
アプリやサービスはつくって終わりではない。特に教育系アプリは、従量課金型よりも月額定額課金型ビジネスの方が向いている業界。常にアップデートが必要で、飽きられない仕組みをつくり続けなければならない。つくり続けるにはお金がいる。
マネタイズは後で考えるとして、とにかく先にサービスをつくるのは正しいと思います。しかしながら、そのサービスを続けていくためには、どこかで必ずマネタイズの仕組みを考えないとならなくなる。
今回のイベントでもっともおもしろいと思ったのがここで、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社の河野さんが最後に話されたことが印象に残っています。それが、お金を取る主体を変える、という発想。
to Cのビジネスイメージが強いこの教育ベンチャーですが、そもそも「教育」は国益に繋がる大変重要な要素。教育を受ける消費者からだけではなく、企業や行政から福利厚生の一環としてお金を頂くというのは、とても理にかなった手法なのではないでしょうか。少子化によって、今後おそらく日本の人口は減っていくばかり。教育の対象となる子どもの数自体が減っていくのですから、ベンチャーは片意地張っていないで、行政や大手企業を巻き込みながら素晴らしいサービスの開発と、理にかなったマネタイズを図っていってほしいと思います。
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