ラジおこしで読む、「自殺者は『本質的』に減らない」という事実。
衝撃を受けたこの記事をご紹介。
「2000人減ったのではなく、また2万8000人増えたんです」:自殺対策NPO代表・清水康之氏が語る、自殺対策のいま | ラジおこし
自殺者は「本質的」に減らない
イケダハヤトさんがアドバイザーとして関わられているラジオ番組の書き起こしメディア『ラジおこし』。お笑い芸人のコンテンツ、特にハライチの番組ネタは爆笑もので、ラジオを聴く習慣のない人(私含む)にとっては書きおこしでいつでも読めるというのは大変ありがたいサービスですね。
そんなラジおこしが今回取り上げたのはJ-WAVE『JAM THE WORLD』。メディアアクティビストの津田大介さんが火曜日にナビゲーターを務めているのですが、対談相手は自殺防止の取り組みを行なっているNPO法人ライフリンクの清水さん。JAM THE WORLDは津田さんのメルマガ『メディアの現場』でよく文字起こしされているので、おそらくこの回もそのうち掲載されるのかと思いますが、いち早く文字化してくれたラジおこしには感謝!
さて、その内容なのですが6月3日に閣議決定されたばかりの自殺対策白書に絡めての話でした。
毎年約30,000人が自殺により亡くなっている我が国日本ですが、ここ数年では減少傾向があるそうです。ここだけ聞くと『減っているのは喜ばしいことだ』と思いがちですが、清水さんは津田さんとの対談でこう話されたようです。
(前略)
清水:しかも「減ってる」と言っても年間ベースで見れば減っているというだけであって、本質的な意味では自殺で亡くなる方の数って減ることがないんですよね。
津田:それはなぜですか?
清水:例えば、失業者数であれば失業状態にある人が増えれば「失業者」は増えますよね?
津田:そうですね。
清水:でも、その人たちが就労すれば失業者数は減るわけです。まさにこれは増えたり減ったり、という感じなんですけど、自殺で亡くなった人というのは一度亡くなったらもう二度と生き返ってくることはないわけです。
津田:あっ、たしかにそうですね…。
清水:たしかに3万人だった年間の自殺者数が翌年、2万8000人になったとしたら、年間ベースで見たら2000人減ってるけど本質的な意味ではまた2万8000人増えたってことなんですよ。
津田:なるほど、これは全く数字の捉え方を変えなければいけないということですね。
清水:そういうことです。
これは盲点でした。確かに失業率が変動していると、「昨年に比べて今年は就職できた人が増えたんだな〜よかった。」とか「ああ、今年は去年よりも悪いのか・・・転職はやめておこうか。」なんて考えがちですが、自殺者数が減っているというのは失業率が減っているのとはわけがちがう。自殺者はもう2度と戻ってこない人たち。その年に亡くなった方は、次の年にはカウントされない。
つまりタイトルのとおり、2,000人減ったのではなく、また28,000人自殺者が増えたと数字を読まなければ問題の本質が見えてこないんですね。正直、かなりショックを受けました。ただ漠然と「自殺者は減っているんだな〜」と思っていた自分を叱りたいところです。
清水さんと津田さんの対談は電話で、時間はたった10分程だったそうですが、とても濃密な会話だったことがラジおこしの記事から伺えます。
1日に80人近くの人が自殺で命を失っているこの国。数字は雄弁ですが、上手に使わないと数字に操られてしまう側面もあります。今回の自殺者が減っている「ようにみえる」数字もそう。「年間約30,000人が自殺している」と言うのと、「1日に約80人が自殺している」と言うのでは受け取り方が変わってくるでしょう。ひょっとすると自分のまわりにいる人がその1人になるかもしれない。そう思える数字は後者の方なのかもしれませんね。
Podcastのおかげもありラジオを聴ける環境は十分に整っているにも関わらず、文字コンテンツにならない番組が多いのはもったいない。この『JAM THE WORLD』は津田マガで紹介されることもあるのでまだいいですが、ラジおこしに限らずおもしろいコンテンツが文字で残る仕組みができればいいのになって思いました。
- 作者: ショウペンハウエル,Arthur Schopenhauer,斎藤信治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/04
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (43件) を見る