ロトスコープで描かれた賛否両論の問題作、アニメ「惡の華」を理解するための考察
http://hentenna.hatenablog.com/entry/2013/01/23/214747
1/23にマンガ版の「惡の華」についてブログに書きましたが、今回アニメ化されましたので再度記事として取り上げてみました。
まず、原作ファンには衝撃が走ると思います。
それは人物の作画。
このブログではキャプチャ画像は用意しませんが、下記のブログを見るとどういったものかが分かるでしょう。
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アニメの悪の華見て思ったことwwwwww
http://sonicch.com/archives/25406534.html
アニメ悪の華いいじゃん!!!!!!!!!!!!!!!!
http://yaruj.doorblog.jp/archives/25407443.html
【悲報】アニメ版悪の華でサムゲ荘を超えるレベルの原作改変
http://anige-sokuhou.ldblog.jp/archives/25362311.html
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放映まで人物の作画については全く触れられておらず、尚且つ公式ホームページも人物イラストは全くありません。放映前紹介PVにも人物は映らず。これはあえての策略だったのでしょうか。原作マンガがいわゆる「萌え絵」と呼ばれていたことからか、ネット界隈では批判的な声で溢れているようですね。私も見た当初は驚きました。
なぜ、こういったアニメになったのか知りたい。
そこでいろいろと調べてみると、ナタリーで企画された以下の対談で理解することができました。
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http://natalie.mu/comic/pp/akunohana
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そもそも、このマンガをアニメ化する意味はどこにあるのか?
監督の長濱さんはこう答えています。
”実は僕、監督のオファーを一度お断りしてるんですよ。「これアニメ化したって、原作ファンも押見先生自身も、誰も喜ばないと思いますよ。やるなら実写ドラマのほうがいいんじゃないですか」って。(中略)だって「惡の華」って読む人のパーソナルな部分に訴えかける作品じゃないですか。個々人の事情で思い入れを抱いたり、心が動いたりする作品だと思うんです。それを髪の毛にツヤが入ってるような、綺麗なアニメ絵にして見せたところで、「マンガ読んでるほうがいい」って言われて終わっちゃうと思ったんですよ。”
なるほど、確かにそうです。
私が以前書いたブログのとおり、このマンガは絵の可愛らしさに反して、容赦がありません。かなりヘビーなストーリーです。単純に押見先生のイラストのままアニメ化することに意味を感じませんね。
そして次に監督はこう述べます。
”再びオファーをいただいたんですけど、そのときひとつだけ可能性はあるなとは思っていて。それはさっき言った「実写なら」って話に結びつくんですが、ロトスコープを使えば面白く作れるかもしれない、と思いまして、それを提案してみたんです。”
ここで「ロトスコープ」という、一般人には聞きなれぬ単語が出てきます。
wikipediaによると、
”モデルの動きをカメラで撮影し、それをトレースしてアニメーションにする手法。マックス・フライシャーにより考案され、短編アニメーション映画『インク壺の外へ』(1919年)で初めて商業作品に使用された。ディズニーのアニメーション映画『白雪姫』(1937年)などで有名である。また『スター・ウォーズ』シリーズに登場するライトセーバーの光刃も、俳優の持つダミーの棒をトレースして描画している。
撮影の手間と機材の用意を考慮すれば、非常に贅沢な制作方法と言えるが、近年はデジタルアニメの技術向上などにより、インディーズのアニメにも時折使用される。アニメ『惡の華』(2013年4月~)で全編にわたりこの技法が用いられ、日本のテレビアニメでは史上初の試み[1]として話題となっている。”
となっており、既に『惡の華』が全編この手法を使ったアニメであることが注目されていることが分かります。
対談中で、押見先生が知っているロトスコープ作品として挙げている、スキャナー・ダークリーを観てみましょう。
アニメ『惡の華』と同様なことが分かります。とんでもなく背景が美しく、人物の動きもヌルヌルしていて、気持ち悪いほどにリアルです。
このロトスコープについて、監督はこう述べています。
”簡単に言うと実写トレースですね。まず実際の人間に演技してもらって撮影して、それを1コマ1コマトレースして、アニメに起こす、という技法です。当然ですけど人物の造形や動きが、ものすごく写実的に描かれるんですよ。TVアニメでやるには珍しいやり方で手間もかかりますし、制作会社がOK出すかどうかはわかりませんでしたが、それなら原作とはまた別なものとして、視聴者に受け入れられるんじゃないかと。”
そしてこの手法を使った結果、描かれる人物作画について押見先生は、
”僕の絵がアニメ絵になって動くというんじゃなくて、まったく違う実写タッチの絵になることは理解できたので、これは面白くなるんじゃないかと直感しました。”
と答えられています。
この対談を読むと、アニメ版に対する理解が変わるのではないでしょうか?私は俄然興味が湧いてきました。
登場人物の「仲村佐和」は今作でもっとも重要な人物なのですが、正直、ロトスコープで表現された仲村佐和は、まったく可愛くありません。むしろ腹立つくらいに不気味に描かれています。
原作をこよなく愛する私も、このまま見続けるのが不安になる面はあります(登場人物に感情移入できるかどうかは非常に重要だと思いますので)。しかし、原作を含めこの作品に付きまとう不穏な空気感は、アニメ版でもうまく演出されていますし、続きが気になるのは確かです。
ただ、どんなにめずらしく、優れた手法を使っていたとしても、作品として面白くないのでは意味がありません。どれだけ原作の面白さが描けるか、楽しみです。
賛否両論渦巻く現状は、ロトスコープという手法をふんだんに使って作られた初めてのアニメとなる本作にとってそう悪いものではないのかもしれません。話題にはなっているのですから。
私は来週も見ます。ぜひこの不安感を払拭してもらいたい、そう思いますので。
最後に、このアニメのエンディングテーマをご紹介。ASA-CHANG&巡礼の代表曲「花」を、同名バンドが惡の華のためにリアレンジした意欲作。ぜひ聞いていただきたい!度肝を抜かれますよ。
」
惡の華ED 「花 ~a last flower~」 - YouTube