日本禁煙学会が、映画「風立ちぬ」制作担当者宛に出した「作中のタバコ使用」についての要望書に思うこと。
『風立ちぬ』に日本禁煙学会が要望書「なぜこの場面でタバコが使われなくてはならなかったのでしょうか」
http://www.huffingtonpost.jp/2013/08/14/kazetachinu_n_3753060.html
by huffingtonpost.
まず、日本禁煙学会なる存在をはじめて知りました。ハフィントンポストには、こう説明されています↓
日本禁煙学会は、日本禁煙推進医師歯科医師連盟(禁煙医師連盟)の有志が集まり、2006年に立ち上げられたNPO法人である。医師だけではなく、薬剤師・看護師、そして一般のかたも参加しており、禁煙推進の政策提言などを行っている。これまでにも、禁煙ポケットブックを作成したり、タバコ1箱1000円への値上げに関する要望書を厚生労働大臣に提出するうなどの活動をしている。
日本禁煙学会
へぇ、NPO法人だったんですね!ホームページを読んでみると、まともな組織であることはわかります。此度の要望書を読んでみても、別にジブリを敵対視しているような激しい文面ではありません。それこそ会社や作品そのものを貶めるようなことは書いておらず、要するにタバコを吸っている「描写」にのみ問題があるとの申し出のようです。
私はすでに『風立ちぬ』を観ていますが、確かに主人公の堀越二郎は尋常じゃないくらいのヘビースモーカーっぷりで、結核を患う妻の横でも仕事をしながらタバコを吸っている描写がありますし、あらゆるシーンでタバコを吸っているので、喫煙者の方や禁煙をがんばっている人の中には、喫煙を煽られているような気持ちになる方もいるみたいですね。
・・・でもですね、上記の病床に伏せる妻の横でタバコを吸うシーンは、堀越二郎と妻の関係性・仕事を取るか妻を取るかで葛藤する堀越の思い等が象徴されるアイテムとしての”タバコ”だった訳です。確かに別の表現を取ることは可能でしょうが、監督が表現したかったものを100%完全に補完できるようなものはないでしょう。放送禁止用語を言い換えたところで、本来のコトバが持つ重みや意味合いは絶対に伝わらないのと同じで。
一応言っておくと、私は基本的に日本禁煙学会が行なっている事業には賛同します。そもそも極度の嫌煙家で、タバコは吸うどころか見るだけでもイヤですし、歩きタバコしているクズをみかけたら今すぐ事故で召されればいいのにと思うほどです。
それでも、フィクションに対しては規制をかけるべきではないと考えています。これは今話題の児童ポルノ規制法についてもそうですが。創作に規制をかけてしまうと面白い創作物が産まれなくなっていって、誰がみても健全でまっとうなものしか残らないという、非常につまらない世界になっていくことでしょう。
この『風立ちぬ』は、戦争時代を描いた物語です。原作やモデルはありますが、フィクションとよんで差し支えないものと思います。当時の世界観を再現するには、タバコの存在を隠すわけにはいかないでしょう。あるものを、ないものとして扱うことは、誤った時代観を与えることにはならないでしょうか。そっちのほうが影響が心配です。このことについて、書評家の豊崎由美さんが納得のいくツイートをされていたので紹介します。↓
ない頭で一生懸命考えても、喫煙者を登場させないディズニー社のほうが表現としては異常としか思えない。思い出すのは大人計画の芝居。松尾スズキ氏は作品の中に身体障害者を頻繁に登場させる。なぜか。いるからです。存在するものを「見えない存在」にしない。それは「表現」の基本と思います。
— 豊崎由美@ガタスタ屋ですが、それが何か? (@toyozakishatyou) August 14, 2013
存在するものを「見えない存在」にしない。それは「表現」の基本と思います。
表現者であれば、絶対にそうあってほしいと思えるコトバですね。
みなさんは、この件についてどう思われますか?ジブリから正式なコメントが返ってくるのかどうか、楽しみではあります。
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