中島みゆきが作詞した『泣いてもいいんだよ』は、ももクロ稀代の名曲になる予感
中島みゆき × ももいろクローバーZ
ももいろクローバーZのメジャー11枚目のシングル『泣いてもいいんだよ』が2014年5月8日に発売されました。北川景子が主演している映画『悪夢ちゃん』のテーマソングとしてもおなじみのこの曲。聴いた方は、今までのももクロソングとはひと味違う「重さ」を感じて驚いたことでしょう。
それもそのはず、作詞はあの中島みゆきなんですよね。歌の出だしから中島みゆき節全開で、その歌詞の重さに魅き込まれてしまう。曲調は力強く、一気に駆け抜けていくような印象が強いですが、何度も繰り返されるサビはとても物悲しく、心に刺さります。ももクロがここまで「誰か」に向けた歌を歌ったことがあったかなとふと考えたんですが、思いつきませんでした。
ついこの間、夢の国立競技場公演を終えたももいろクローバーZ。それすらも通過点でしかない彼女たちは、次にどういった進化を遂げるのか。それが試される今回のシングルですが、まさかのメッセージソングだとは。もちろん悪い意味ではありません。少女から大人になった彼女達(全員じゃないですが)が自分に向けて放つメッセージと、私たちモノノフ(ももクロファンの通称)に向けて放たれるメッセージ、その両方を内包している、極めて意味合いの強い歌だと思います。
中島みゆきの歌詞が好きな私としては、やはりその歌詞を解剖していきたいと思ってしまうんですよね。というわけで、印象的なフレーズを見ていこうと思います。
泣いてもいいんだよ 解剖図
強くなれ 泣かないで 強くなれ 負けないで
大人になれ 泣かないで 大人になれ 負けないで
僕たちはいつだって 乳飲み子の頃だって 言われ続け育った
歌い出しの部分ですが、すでに重い。
「もっと強くなれ!」「はやく大人になれ!」「泣くな!」「負けるな!」
・・・大人は子どもに対して簡単にこういうことを言いますよね。強くなきゃ生きられない。早く大人になることを望まれる。すぐに泣くと怒られる。勝つことを求められる。
大人になるってそんなに息苦しいものなのか。
苦しくても、つらくても、泣いてはいけないのか。
小さい頃からそう思い込まされているのかもしれません。だから私たちは素直に泣けないし、勝負に負けてはいけない。感情を素直に表に出せなくなっていく。
逃げ道のない 闘いの日々が いつか人類を 疲れさせてゆく
危ぶみながら 見ぬふりの未来が いつか本能を しびれさせていく
こんな約束を 僕たちはしていない
泣き虫な強いやつなんてのがいてもいいんじゃないか
ここはまさにサラリーマンに向けた言葉のように聞こえますね。常に退路を断って闘い続ける生活は、慢性的に疲労困憊し、それが続けば次第に本能を痺れさせてしまう。感情をなくし、他人に対して不感症になってしまう。
「こんな約束を 僕たちはしていない」
このフレーズは特に印象的。僕たちはこんなふうに心を壊していくことを望んでいない。「僕たち」はももクロのメンバーもそうだし、私たちモノノフだけじゃなく、そういう約束のしていないルールに縛られ、がんじがらめになって苦しんでいる全ての人が含まれているんじゃないか。別に泣き虫でも心根の強い人はいるし、本当は泣くのを我慢しているだけの弱虫もいるだろう。通り一遍の解釈で人を判断するな!そんなことを感じさせる歌詞ですね。
全然泣けなくて 苦しいのは誰ですか 全然今なら 泣いてもいいんだよ
そりゃ!
全然泣けなくて 苦しいのは誰ですか 全然今なら 泣いてもいいんだよ
サビ。
とても強くて、とてもやさしい言葉。涙はこらえているうちに出なくなっていく。そのうちに泣けなくなってくる。こんなに泣きたいのに、涙が出ない。そんな不感症になっている人が周りに何人かいます。これは涙だけじゃない。あらゆる感情が出なくなっていくんです。どんなに強い人だって、泣きたくなるときはある。女だろうが男だろうが関係ない。泣きたいときに泣けなくなる前に、全然今なら、泣いてもいいんだよ。
初めてこの歌をPV観ながら聴いたとき、私は泣きました。というより、自然に涙が出ました。あー、普段から感情ごまかしていたんだなと心底から泣きました。
ここの歌詞がいいのは、「泣け」と命令するわけでもなく、「ほら、泣きなよ」と勝手に寄り添ってくるのでもなく、「泣いたっていいんだよ」と優しく囁いてくれるところですね。中島みゆきの重い歌詞の中にたびたび見られる、深い優しさのようなものを感じます。
そしてもう1点。モノノフのみならずももクロメンバーが「泣いてもいいんだよ」という言葉をもっとも掛けてあげたいのは、間違いなくリーダーの百田夏菜子でしょう。本当は人に頼りたいけど、素直に頼れないという彼女の性格が成すものなのか、3年ほど前から彼女はあまり泣いていないように見えます。中島みゆきがどんな思いでこの歌詞を書いたのか、そもそも「ももクロが歌うこと」を前提として書いたのかどうかすら私は知りませんが、まさに百田夏菜子に向けてつくられた歌でもあるなと感じました。全然泣けなくて苦しいのは、きっと夏菜子でしょうから。
1日の中に 1年を詰め込む 急ぎすぎる日々が 欲望を蝕む
隙も見せられない 警戒の夜が いつか涙さえも 孤立させてゆく
どんな幻滅も 僕たちは越えてゆく
でもその前にひとしきり 傷むアンテナもなくはない
Bメロは、Aメロと似た歌詞内容ですね。社会で揉まれている人なら誰もが感じるこの忙しさ。忙しく働くことがベースになると、欲望を抱く感情までもがすり減ってなくなっていってしまう。「欲望」という言葉は何かと悪い意味で捉えられがちですが、適度に欲望があることで人は活力を見出せるもの。しかし、急ぎすぎる日々はそんな欲望すらも蝕み、すり減らしてしまう。
期待されていることを、必ずしも上手く乗り越えられていけるとは限らない。本人は乗り越えられたと思っていても、手段や方法が違っていて幻滅されてしまうことも往々にしてある。だが、その幻滅にやられてしまってもしょうがない。全員に賞賛されることなどありはしないのだから。だから、どんな幻滅も僕たちは超えていかなければならない。
でも、だからといって心が痛まないかと言えば別問題だ。傷つくところはしっかり傷つくし、穴が開いたまま走り出さないといけないこともある。それをはっきりと言い出せない迷いのようなものが、「傷むアンテナもなくはない」という迂遠な言い方に隠されているような気がする。「ある!」と言い切れない弱さが見え隠れしているような。
この後はサビが続く。
ひたすらに繰り返される、
全然泣けなくて 苦しいのは誰ですか 全然今なら 泣いてもいいんだよ
というフレーズ。
シンプルなだけに心にきますね。
このシングルはももクロ史上初となる、オリコンウィークリーチャート1位を記録しました。むしろ今まで1位とったことがない事自体に驚きましたが。国立競技場公演をクリアし、何かが変わったももいろクローバーZ。それが何なのかはわかりませんが、この「泣いてもいいんだよ」を聴いて、早見あかりが脱退しももいろクローバーに「Z」がついたときを1回目、鮮やかなカラーやビジュアルを封印したアルバム「5TH DIMENSION」のライブを2回目の進化と考えると、今回は3回目となる進化なのかもしれません。
CD・DVDの販売枚数やライブ動員客数で日本一をとるのではなく、人を笑顔にすることで天下一になると宣言したももクロが、今後どのような道を辿るのか、イチモノノフとして楽しみで仕方ありません!ぜひ彼女たちには常識やルール、伝統などを超えた高見にまで昇りつめてほしい。これからも応援し続けます!
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※ちなみに冒頭の写真でおわかりのとおり、私はももクログリーン・有安杏果推しです(限りなく箱推しに近い杏果推しですが)。しっかり初回特典のトレカをゲットしました。わざわざ銀座の山野楽器まで買いにいった甲斐があるというものです。
※杏果のLINEスタンプ風画像を公開されているモノノフさんがいらっしゃいましたので、紹介させていただきます。めちゃかわいい♪
使用に関しては自己責任でお願いします。 ZIPファイル → http://t.co/Oxk6tvMasV サムネイルページ → http://t.co/IpSAMYLiQZ それぞれの画像のリンク先の画像をDLしてください。 pic.twitter.com/G8q9VTClVG
— カツオ (@mmk2o_z) 2014, 5月 4