B&Bで行われた”柴田元幸翻訳 アーネスト・ヘミングウェイ 『こころ朗らなれ、誰もみな』 刊行記念 柴田元幸×穂村弘トークイベント 「はじめてのヘミングウェイ」”に参加しました。
翻訳者として著名な柴田元幸さんの新刊アーネスト・ヘミングウェイ 『こころ朗らなれ、誰もみな』 の発売を記念して、1月18日に下北沢の書店”B&B”で行われたトークイベントに参加してきました。対談相手は、歌人の穂村弘さん。このイベントはすぐに満員御礼となってしまったようですね、予約しておいてよかった。
実は海外文学は苦手で今までほとんど読んだことがなかったのですが、ヘミングウェイの
作品自体にはもともと興味があったことと、昨年の秋に上野で行われた読書のイベント
「読書のフェス」で生の柴田元幸さんをみて、自分で翻訳した小説を熱のこもった口調で
朗読される姿を目の当たりにし、一瞬で好きになった経緯がありました。それから、何か
イベントがあればまた参加したいなと思っていたところで、B&Bでイベントが行われるこ
とを知り参加した次第です。B&Bでは面白いイベントをほぼ毎日やっていますので、ぜひホームページを見てみてください!
そういえば、読書のフェスについては何も取り上げていなかったので、次の機会にでもアップしてみます。
時間通り対談開始、まず最初に柴田元幸さんから、絵本「わたしのゆたんぽ」の紹介。絵を描いていらっしゃる”きたむらさとし”さんとご友人だそうで、素晴らしい絵本なので持ってきたとのことでした。イベント後に目を通してみようと思ったらすでに売り切れており、残念ながら読めていないのですが、かわいらしい表紙とは違って驚きの結末だそうです。ああ、読んでみたい!
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なぜ対談相手が歌人の穂村弘さんなのか。イベント前はそこが気になっていました。
対談冒頭にそこについて話があり、もともと穂村さんは上智大学の英文学部卒で、卒業論文でヘミングウェイを書いたことから今回の繋がりとなったそうです。卒業論文にヘミングウェイを選んだのは、英文学科なのに英語が大の苦手でヘミングウェイなら翻訳モノが出ているだろうという理由だったと聞き、思わず吹き出しました。
そんな穂村さんがヘミングウェイの作品を評してこんなことを言っておられました。
「すごく大きな運命に触れてしまった人が書いたようだ。」
なるほど、確かにそんな印象が私にもあります。
そして、ヘミングウェイの小説はとてもお腹が減るとも。食欲増進剤としてヘミングウェイを読んでいたという話も穂村さんらしいなと思いました。
小説は創造性を育むものです。誰もが小説を読んで、自分なりに情景を思い浮かべ、自分なりのキャラクターを造型し、自分なりにストーリーを咀嚼する。そんなものだと思っていたのですが、穂村さんによると、2つのパターンがあるとのこと。
「コトバの背後に”映像”を浮かべる人と、”コトバそのまま”を感じ、受け取る人がいる。前者はストーリーを重んじ、後者はコトバのみに着目する。」
穂村さんは後者だとお聞きして、至極納得。穂村さんの短歌の世界は、まさにそうだと思いましたから。コトバそのままを受け取る、ということがどんなものなのか私には想像できないのですが、きっとコトバだけで酔ったりすることができるんだろうなと思うと、とてもうらやましい。
穂村さんが今回の翻訳作品「こころ朗らなれ、誰もみな」を読み、持った感想として、とてもマッチョで孤高な印象のあるヘミングウェイも、私たちと同じ人間なんだということを、一番感じた翻訳だったとのことでした。特に一番最後の話について、そう思ったそうです。
柴田さんは最後のほうに収録している「心臓の二つある大きな川」は完璧な作品と評していた。同じ文章を書くものとして、心が折れるとまでおっしゃっていました。
お二人のこの話を聞き、私は本書を買いました(ラスト1冊!)。
穂村さんが、ヘミングウェイに近い日本人作家は誰でしょうね?という難題を柴田さんに出し、悩まれた結果、村上春樹ではないかとのお答えにいささか「そうかな?」と思ったのですが、柴田さんが「純文学の文章は、気持ちいいものでいいんだ!」という観点で、同じではないかと捉えられたのを聞いた際に、ピンときました。いわゆる純文学は、読み解く、感じ取るのが難しいものという印象が強いのですが、確かに上述の二人の文章は、気持ちいい。シンプルながら、とても納得しました。
そうして続いた対談の前半終了前に、柴田さんの朗読タイム。
「世界の光」
柴田さんの朗読は、熱い。コトバとしても、映像としても、熱い。ビール一杯しか飲んでいないのに、おそろしく酔いました。しかし、よい気分で。
後半は、穂村さんのヘミングウェイ短歌10首披露から始まりました。穂村さんの自由律のように受け取れる短歌は、とても面白いですね。
続いて柴田さんより、ヘミングウェイの詩を3つ、英語と翻訳で朗読。
戦争、死というテーマが多いことと、韻を踏むのもとてもきれいな印象。詩はストレートに刺さってくるが、むしろ散文の方が詩のように聞こえる不思議。
質問コーナーを設けたあとに、
柴田元幸さんによる”良いライオン”の朗読でイベントは終了しました。
最後まで、静かなのに熱い、ステキなイベントでした。
柴田さん、穂村さん、B&Bさん、ありがとうございました。
※『こころ朗らなれ、誰もみな』にサインをしていただきました。少しお話も出来て嬉しかった!
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