2013.11.24 ”知的書評合戦 ビブリオバトル首都決戦2013” 情熱のプレゼンに心を震わせる。
知的書評合戦ビブリオバトル 首都決戦
このブログを読んでいる方は、「ビブリオバトル」というイベントをご存知でしょうか?
●ビブリオ=本
●バトル =戦い
つまり、自分の大好きな本をプレゼンし、誰の紹介した本が一番読みたくなったかを競わせる「書評大会」がビブリオバトルの趣旨です。時間は5分間。オーバーしてはいけないし余らせてもダメ、さらに小道具程度ならOKだがプレゼンソフトの使用やペーパーの配布も禁止。純粋に「本」と「人」のみで構成されているのが特徴です。
私は以前、ビブリオバトルを応援している紀伊國屋書店新宿南口店で行なわれたビブリオバトルに参加したことがありますが、過度の緊張と準備不足で頭の中が真っ白になるという情けない結果に終わりました。
好きなものについて話すにしても、ただの発表会ではなく「バトル」である点が大きく、自分の好きな本について紹介しているからには、やっぱり負けたくない!という気持ちが湧いてくるんですよね。うまく紹介できなかった自分に対しても悔しかったし、単純に負けたことも悔しかった。プレゼンバトルとはこんなにも”感情表現”で動くものなのかと驚いたくらいです。
さてそんなビブリオバトルは年々普及していき、全国大会も行われています。今回観客(=審査員)として参加したのは、その全国大会決勝戦・首都決戦です。これは全国をブロック分けし、それぞれのブロックで優勝した方を東京は秋葉原に召集し、プレゼンバトルで優勝(=チャンプ本)を決めるというものですが、面白いことにビブリオバトルでは勝つのは「人」ではなく、「本」なんですね。もちろんプレゼンが勝敗を大きく左右しますし、人柄や喋り方なども関係してきますが、選ばれるのはあくまで「本」。いくらプレゼンが上手くても、その本を読みたくさせないと勝つことはできません。ここがミソですね。
さて、それでは決勝戦まで勝ち残った5人の戦士たちを紹介しましょう!(といってもその戦士=本ですが)
・徳島・香川ブロック 鳴門教育大学大学院 西森貴志さん
まず1冊目はこちら。
小説は好きですが、この越谷オサムという小説家は知りませんでした。意味深なタイトルは、主人公が自分の人生をなぞらえて「俺の人生って、パンクバンドのボーナストラックみたいだったなぁ。」とふりかえるところから付けられたようです。
本が面白そうなのはもちろんの事、発表者の西森さんはプレゼンがめちゃくちゃ上手い!ゲストの思想家・東浩紀さんがプレゼン力を絶賛されていました。5分間の発表時間を見事にピッタリ使い切り、本の内容に自分の人生を重ねての内容で、私は泣いてしまいました。西森さんがなぜこの本が好きなのかが本当によく分かる内容であり、ストーリーを強く感じさせてくれました。一番手のプレッシャーにも見事に打ち勝ちましたね。
・関東ブロック 東京農工大学 田中伸吾さん
続いて2冊目。
なんとも小難しそうなタイトルで、実に手に取りにくいと思われそうですが、発表者の田中さん曰く、文系の方にも取っ付きやすく書かれた、生物学の入門書のようなつくりであるそうです。・・・残念ながら私はあまり興味を引かれませんでした。根っからの文系だからかなぁ。
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・広島・山口ブロック 福山市立大学 中元麻友美さん
3冊目。
決勝まで勝ち上がった唯一の女性ですね。女性らしくか取り上げた本のタイトルは「クリスマスプレゼント」。なんともほんわかした話なんだろうなぁと思いきや、中元さんが仰るには予想を裏切るどんでん返しの極みのような短編小説だそう!どんでん返し好きの私には向いているかもと期待。
ちなみにこの中元さん、喋り方がかなり独特で、正しい日本語を聞き取りやすいスピードで話すことについてかなり自信を持っていると思わせます。ゲストの水道橋博士がそこにはしっかりつっこみ、中元さんご本人から自信がある旨の言質を取っていました。朗読が好きなんだそうですよ。
・首都圏ブロック 明治大学 小松雄也さん
早くも4冊目。
先に言いますが、私はこちらの本に1票を投じました。
葉隠といえば、「武士道とは死ぬことと見つけたり」が有名ですよね。第2次世界大戦時、神風特別攻撃隊の教訓としても使われ、危険思想として後世には問題視されたこともあるそうですが、三島由紀夫はこの葉隠を絶賛していたと書かれています。
面白いのが、これ葉隠が書かれたのはもはや武士が必要ではなくなってきた時代。それでも武士は生きなければならない。つまり葉隠は落ちぶれ始めた武士の処世術が記された、現代でいうサラリーマンが読むハウツー本のような存在であったそうです。これは読みたくなる!プレゼンも落ち着いた佇まいで、非常に興味が湧きました。
・関西Bブロック 関西学院大学 中前圭祐さん
ラスト5冊目。
JAXAが今まで明かさなかった宇宙飛行士選抜試験の全幕を詳細に記した、涙なしには読めないドキュメンタリー。マンガ「宇宙兄弟」セリフを使ったプレゼンが上手かったのが印象的。相手を蹴落としてでも採用されたいと思って当たり前の選抜試験で、試験を進めて行くうちに不思議な連帯感が生まれていく。相手を蹴落とすのではなく、助け舟を出してしまう人もいる。助けたことで自分が落ちてしまうかもしれないのに・・・。
人間というのは、理屈で測れないところがあるんだと強く感じさせてくれます。発表者の中前さんは、その過程で涙を流したとのこと。私も、きっと泣くだろうな。人間を、もう少しだけ信じてみたくなる。